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いい国にしたいと、切に願ふ ~中日新聞「社説」

中日新聞「社説」

 ◇ 財政再建はなぜできぬ 年のはじめに考える(1月8日)--> こちら
   安倍さんは高橋是清のリフレ政策をそっくり真似たと考えられる。
   で、問題は出口だが、それが見えない・・・

 ◇ 「強い国」って何だろう 年のはじめに考える(1月7日)--> こちら
   安倍政権でもっとも足りないのは世界の動きを見るセンスであり外交力
   いくら軍事費をつぎ込んでもこれらがないと戦争を回避できない。
   それとも勃発してもしょうがないと高をくくっているのか・・・

 ◇ 「幸せの循環」創りたい 年のはじめに考える(1月6日)--> こちら
   支え合いで連帯するしかない
 ◇ 憲法を守る道を行く 年のはじめに考える(1月5日)--> こちら
   国家を縛るのが憲法なのに、国民を縛る逆の草案。先進国の憲法ではない。
 ◇ 福島への想い新たに 年のはじめに考える(1月4日)--> こちら
   原発は金のかかる危険なものだということに、国民の多くはもう気づいているはず
 ◇ 希望学がひらく未来 年のはじめに考える(1月3日)--> こちら
   農山村の資源は“宝の山

1月1日以前は、
 --> こちら 




中日新聞社説2014年1月8日
財政再建はなぜできぬ 年のはじめに考える

【社説】
2014年1月8日

 いよいよ三カ月後に消費税増税が待ち受けます。暮れの膨張した政府予算案をみると、いくら増税しても財政再建は実現しないのではと不安が募ります。

 予算は政治そのものといわれます。やや難解ですが、予算とは限られた資源の分配をめぐる政治的な調整にほかならないからです。どういうことでしょうか。

 身近な町内会で考えてみます。収入は町内会費や住民の寄付金、支出はお祭りや慶弔ごと、寄り合い所の備品購入などでしょうか。

 業界団体への高配当

 高度成長期やバブル期であれば、住民は増え、寄付も多く、町内会費は潤沢です。祭礼でお神酒を大盤振る舞いし、寄り合い所に大型テレビを購入、慶弔費だって弾んでいいかもしれない。その差配はさほど難しくないでしょう。

 ところが時代は変わり、人口減と低成長時代です。住民は減り、不況で寄付も集まらなかったら、どうでしょうか。限られた町内会費だから支出は厳しく査定する。よく話し合い、説得や妥協を重ねて優先順位をつける。場合によっては町内会費の値上げも必要かもしれない。こうした分配をめぐる一連の政治的な調整作業こそが予算の本質です。

 話は戻り、過去最大の九十六兆円(一般会計総額)に膨張した政府予算案の問題は何でしょうか。それは低成長・少子高齢化時代にもかかわらず高度成長期のようなバラマキ型分配を続けていること、分配先が選挙で自民党を支援した業界団体への手厚い配当(公共事業、農業、診療報酬など)や安倍晋三首相肝いりの防衛費に向けられている。増大する社会保障費で余裕などないのに。

 こんな予算をいつまでも続けられるはずはありません。国と地方の借金残高は一千兆円を超え、政府の利払い費だけで年間十兆円に上ります。しかもこれは日銀が異次元の金融緩和で人為的に金利を抑え込んだおかげで低い額で済んでいるといえます。

 予算制度に問題あり

 しかし、政府が財政再建に本腰を入れずに日銀の人為的な金利抑制策に頼り続けていては、いずれこの国の財政を見限って、おカネが海外に逃げて行きかねません。市場の番人である日銀が市場を大きくゆがめている「危うさ」も忘れてはならないでしょう。

 アベノミクスには「手本」ともいえる政策があります。昭和初期、大恐慌時のデフレを収束させた大蔵大臣、高橋是清による「高橋財政」といわれる一連のリフレ政策です。金本位制から離脱して通貨発行量を無制限に増やす大胆な金融緩和、禁じ手とされる日銀の国債引き受けを利用した積極財政。アベノミクスの第一、第二の矢とそっくりです。

 高橋は日本経済を回復軌道に乗せましたが、出口戦略に取り掛かった途上で非業の最期を遂げます。健全財政に舵(かじ)を切り、軍事費を削減しようとして軍の恨みを買い、二・二六事件の凶弾に倒れたのです。安倍政権の行く末を案じるつもりはありません。言いたいのは、異次元の政策をやれば、避けては通れない困難な「出口」が待っているという教訓です。アベノミクスが正念場を迎える日はそう遠くありません。

 では、これまで財政再建がなぜ実現できなかったのでしょうか。「財政再建に失敗している根源的な問題は予算制度にある。それを放置してきた政治家や官僚、さらには国民も」というのは大蔵省(現・財務省)出身で各国の財政に詳しい田中秀明・明治大学公共政策大学院教授です。

 実は日本は一九九〇年時点では先進七カ国(G7)の中で財政の健全性は最上位でした。しかし、バブル崩壊を経て二〇〇〇年には最下位に転落。一方、九〇年代に予算制度改革に着手した欧米諸国は劇的に財政赤字を減らしました。国の取り組みによって財政再建の成否は分かれたのです。

 田中教授によれば、そもそも日本の財政法には目的規定すらなく、また財政再建の道標となる「中期財政計画」をつくっても単なる見通しでしかない。財政法を財政責任法に改め、そのときの政権が財政目標を定め、達成状況を定期的に検証することを義務づけるべきだといいます。

 過去に財政危機を経験したスウェーデンや豪州、韓国、さらに先進各国にならって予算制度の改革が必要と主張します。
 
問題解決への第一歩

 財務省の予算の説明資料は専門家がみてもよくわからないといいます。そうはいっても財政が厳しさを増す少子高齢化は待ってくれません。危機が顕在化して辛苦を味わうのは国民です。難しくても関心を持ち、政治家や官僚が危機感を抱くよう監視していくことが問題解決の後押しになります。



中日新聞社説2014年1月7日
「強い国」って何だろう 年のはじめに考える

【社説】
2014年1月7日

 二〇一四年の日本政治が始動しました。政権二年目に入った安倍晋三首相は「強い日本」を目指すと言いますが、国の強さとは、いったい何でしょうか。

 安倍首相はきのう伊勢神宮を参拝し、年頭の記者会見を行いました。例年より二日遅い始動です。

 この年末年始、首相は映画やゴルフに出掛けたり、地元・山口県で過ごしたり。英気を養い、気持ちを新たにしたことでしょう。

 一月下旬には通常国会が始まります。歳出規模が九十六兆円近くまで膨れ上がった一四年度予算、昨年末の首相靖国参拝など、野党側は厳しく追及する構えです。

絵本が描く「戦争」

 首相は元日付で発表した年頭所感で、経済政策の転換や震災復興への取り組み、国家安全保障戦略策定など政権一年目を振り返り、「『強い日本』を取り戻す戦いは始まったばかり。長く厳しい道のりを緊張感を持って進む覚悟を新たにしている」と表明しました。

 「強い日本」は安倍首相お気に入りのせりふです。これまでも国会などで何度となく繰り返してきました。「強い日本、それをつくるのはほかの誰でもありません、私たち自身です」という具合に。

 では、強い日本とはどんな国でしょう。軍事的に強い国でしょうか、経済的に強い国でしょうか。

 英国の作家、デビッド・マッキーさんの描いた一冊の絵本があります。「せかいでいちばんつよい国」(光村教育図書)です。

 ある大きな国が小さな国に攻め込みますが、その小さな国には軍隊がなく、戦いになりません。小さな国の人々に歓迎された兵士は遊びや歌、料理を習います。

 大きな国の大統領が故郷に戻ると、家々からは小さな国の料理の匂いが。遊びも服装も小さな国のものがはやっています。そして大統領が口ずさんだのも…。

平和国家への評価

 国の強さを決めるのは軍事力ではなく、文化の力だという筋書きです。これは絵本の中だけの「絵空事」ではありません。

 米クリントン政権で国防次官補を務めた、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、文化、政治的価値観、外交政策の三つを源とする「ソフト・パワー」と、軍事力や経済力などの「ハード・パワー」を組み合わせた「スマート・パワー」の重要性を指摘します。

 国民にとって強い経済力は安心して生活するために不可欠です。外国に侵略の意思を持たせないため、侵略があった場合には国民を守るため、必要最小限度の防衛力を持つことも必要でしょう。

 しかし、それだけでは強い国とは言えません。ナイ氏が指摘するように、ソフト・パワーも国力を構成する重要な要素です。

 まず、文化です。先人たちが営々と築き上げ、磨きをかけてきた日本文化は、私たちの誇りです。

 すでに多くの文化遺産がユネスコの世界遺産に登録済みです。多様な食材、優れた栄養バランスで国外にも愛好家が多い「和食」も昨年、無形文化遺産となりました。近年のマンガ、アニメブームも、新しい日本文化として世界に受け入れられた証しです。

 高い技術力の日本製品や日本人の勤勉さも、誇るべき文化です。これらも国力の源と言えます。

 政治的価値観、外交政策はどうでしょう。

 自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済という戦後日本の普遍的価値はもちろん、憲法九条に基づく「平和国家」「専守防衛」も、日本のソフト・パワーを構成する重要な要素です。

 安倍内閣も国家安全保障戦略で「我が国の平和国家としての歩みは、国際社会において高い評価と尊敬を勝ち得て」いると認め、この高い評価と尊敬を「より確固たるものにしなければならない」と述べています。

 しかし、実際はどうか。

 安倍内閣はすでに、武器輸出を原則禁じた武器輸出三原則の見直しや、節度ある防衛力整備からの転換を打ち出し、集団的自衛権の行使容認や九条改正による自衛隊の国防軍化にも意欲を見せます。

文化の力も高める

 こうした安全保障政策の転換が国際社会から高い評価と尊敬を得てきた平和国家、専守防衛という戦後日本の「国のかたち」を変えてしまわないか、心配なのです。

 もちろんソフト・パワーを過大評価すべきでないことは、ナイ氏も指摘しています。重要なのは、ソフト、ハード二つのパワーのバランスを考えながら、最も大きい効果を引き出すことです。

 経済に強さを取り戻し、節度ある防衛力整備にも努める。そして文化の力を高め、平和国家という政治的価値観の持つ力を最大限、引き出す。それができて初めて、日本が本当に「強い国」になったと言えるのではないでしょうか。



中日新聞社説2014年1月6日
「幸せの循環」創りたい 年のはじめに考える

【社説】
2014年1月6日

 映画「おしん」が昨秋、公開されました。大ヒット作品が、三十年ぶりに注目されたのには訳がありそうです。社会の大きな転換期かもしれません。

 「おしん」は一九八三年のテレビ放映当時、最高視聴率62・9%を記録しました。困難に負けずけなげに生きる主人公の姿が感動を呼びました。

 実は、原作者の橋田寿賀子さんが込めた思いは別にあります。

「おしん」に込めた思い

 「日本人はもうこれ以上、経済的に豊かにならなくてもいいのでは」という思いだったと著作「おしんの遺言」で吐露しています。経済的な豊かさが身の丈を超えていると感じていた。明治から昭和を生きた女性の生涯を材料に、この価値観を問いたかったのです。

 戦後、社会は生産を拡大することで富を追求してきました。最近のグローバル競争はそれに拍車をかけている。アベノミクスも依然として成長にすがっている。

 しかし、永遠の成長はあるのか。成熟社会になったと自覚すべきではないでしょうか。

 福島第一原発事故もそれを問うている。再稼働で成長路線を続けるのか、脱原発を進め別の豊かさを目指すのか。脱原発の大きなうねりも、「おしん」の長い沈黙後の再登場も、人々が社会のありようを考えだした証左にみえます。

 年金、医療、介護、子育てなど社会保障制度は社会変化の影響を大きく受けます。戦後からこれまで経済成長と人口増加が重なり、現役世代は自力で生活ができました。社会は安定し社会保障は退職後の高齢期の支援に軸足を置けばよかった。

 成熟社会の行く末は分かりませんが、人口減少と高齢化は進む。二〇六〇年には総人口は九千万人を割る一方、高齢化率は六十年前の5%から40%に上がります。

 制度を支える現役世代には低賃金の非正規雇用が増えました。既に労働者の四人に一人、約一千万人は年収二百万円以下の給与所得者です。若い世代は自助では乗り切れない困難を抱えています。

 社会状況に制度が合わなくなっている。今後は社会保険の共助、税による公助、住民同士の互助による総力で取り組むべきです。

支え合う社会保障制度に

 それには支える側、支えられる側に分かれるのではなく 支え合いで連帯するしかない。全員が制度の、地域の支え手になる。

 だれかに支えられ「幸せ」をもらったら、今度はだれかを支えてそのお裾分けをする。「幸せの循環」を創る。「幸せ」の交換を繰り返すことで周囲とつながり支え合う力は強くなるはずです。

 約七割が高齢者に回っている社会保障給付を若い世代にも振り向ける。子育て支援や若者の雇用対策にも充てれば高齢世代が若い人たちを支えることができます。

 特に教育は人生前半の社会保障です。欧州では大学までほぼ無償で学べる国が多い。教育は未来への投資と考えているからです。日本は自助が前提ですが、こうした点は学ぶべきです。格差が広がるなかで、親の経済力で子どもの教育を受ける機会に差がでることは避けなければならないからです。

 税と社会保険料の国民負担は、高福祉の北欧より低いが、自助を基本にする米国の低負担とさほど変わらない。日本は「中福祉・低負担」といわれます。中福祉を維持するには中負担を避けて通れないし、高福祉ならなおさらです。

 経済力のある人は世代に関係なく少し負担を増やしてもらう。自力で生活できる人は年金の受給を我慢してもらう。医療機関への不要不急の受診は控えてもらう。国民には、社会保障を次世代に受け渡すために負担増を引き受ける覚悟はあると信じます。東日本大震災での助け合いの姿にその可能性を感じるからです。

 地域でも住民同士の「幸せの循環」が力になります。その中心を若者たちが担っていることに希望が見えます。

 社会貢献を目的に仕事に取り組む社会起業家やNPOなどが子育て、介護、貧困対策など地域の課題に取り組む「ソーシャル・デザイン」といわれる動きは広がっています。

若者が示す「未来の姿」

 貧困家庭の子どもたちの学習を支える人、地域に集ったり働く場をつくる人、ホームレスに仕事を見つける人が各地にいます。

 若者は内向きになったといわれますが、関心は足元の地域に向いている。無関心なのではなく、社会の将来を自分の問題ととらえている。成果は収入の多寡ではなく「地域づくり」です。グローバル社会で芽生えた「未来の姿」に映ります。

 政府は消費税増税分はもちろん、国土強靱(きょうじん)化に十年で投じる二百兆円を社会保障に回す。それをすべき時代です。



中日新聞社説2014年1月5日
憲法を守る道を行く 年のはじめに考える

【社説】
2014年1月5日

 安倍晋三政権は今年、憲法改正まで突っ走るのでしょうか。不安がよぎります。選挙の公約とはいえ、本当に国民はそれを受け入れたのでしょうか。

 吉田茂邸が全焼しました。二〇〇九年のことで、神奈川県大磯町に屋敷がありました。日本国憲法が公布、施行されたときの首相で、戦後日本を長く牽引(けんいん)した、「ワンマン宰相」です。

 総ひのき造りで数寄屋風の「吉田御殿」は、多くの人々が「大磯参り」を続けた政治の舞台でもありました。

 炎上のニュースを知って、詩人で作家の辻井喬(堤清二)は「惜しいことに」と感じました。

吉田茂が怒っている

 西武百貨店などセゾングループの総帥でもあった人です。吉田死去後に首相の佐藤栄作から「大磯の吉田邸を君のところで買わんか」と頼まれ、「お引き受けします」と即断した思い出があるのです。池田勇人、三木武夫、宮沢喜一、大平正芳ら、首相経験者とも付き合いがありました。

 吉田邸の建物と庭を思い出しつつ、辻井は回顧録「叙情と闘争」(中央公論新社)の中で、こう考えを巡らせていきます。

 <今日の保守政治の堕落にあの世の吉田茂が烈火の如(ごと)く怒っているのではないか(中略)だから燃えてしまったのだ>

 吉田が戦時中、東条英機ら軍閥の無謀な戦争計画を批判して、憲兵隊に逮捕されたことも、辻井は回想します。

 <僕の考えからすれば、平和憲法とその思想を高く掲げることによって独立国家への道を歩むしかないと思うから、その道は細く険しいのかもしれない>

 <憲法九条を変えて軍備を持ってしまうことは、吉田茂の残した宿題に正面から答える道ではないように僕は思う>

 つまり、今の保守政治に「堕落」の烙印(らくいん)を押し、憲法九条の改正に反対する意思表明です。

小さな穴から広がる

 安倍政権は憲法改正を公約して誕生しました。自民党の改正草案は、自衛隊を「国防軍」とする名称変更だけではありません。交戦権の否認条項を削除し、国際協力という名のもとに、戦争に参加することが可能な条文です。

 自由や権利についても、「責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」とします。明治憲法と同じ留保付きの人権保障なのです。復古そのものです。

 国家権力を縛るのが憲法の役目なのに、逆に国家が国民を縛る改正草案です。先進国の憲法ではありません。

 昨年に強行可決された特定秘密保護法は、この草案中にも「機密の保持」と明記があり、実質的な改正に向け、脈を打ち始めていると考えてもよいでしょう。

 <政治家の系譜を辿(たど)ってみると、吉田茂を源流とする流れと、戦前のナショナリストの流れにいる岸信介の系譜、この二つがあるように僕には見える>

 辻井はそう観察します。岸を祖父に持つ安倍首相がどちらに属するかは自明です。「戦前のナショナリストの流れ」を引き継ぐ政治家が膨張しているようにも思われる今日の政治状況です。

 終戦前に生まれた国会議員は六十八人にとどまり、戦後生まれは六百五十四人にも達します。最高齢の石原慎太郎氏でも終戦時には、十二歳の少年にすぎません。

 東京新聞(中日新聞東京本社)社会部編の「憲法と、生きる」(岩波書店)では、政界引退した自民党元幹事長の古賀誠氏が、自衛隊の海外派遣について警告しています。

 <たとえ小さな穴でも、一つあけば広がっていく。先の戦争のときもそうだった>

 戦争で父を亡くした古賀氏の政治哲学です。彼は「吉田茂を源流とする流れ」にいた一人です。こうした政治家は、今や少数派になったのでしょうか。

 辻井は実業家として、「池袋サンシャインシティ」を開発します。占領下では「巣鴨プリズン」があった場所です。A級戦犯の容疑者として、岸は三年間、ここで幽囚の日々を送りました。

 郷里の山口県から離れる前に、旧制一高の恩師から「自決」を促す短歌をもらいます。でも、岸はこんな歌を返しました。

岸信介は「聖戦」の認識

 <名にかへてこのみいくさの正しさを来世までも語り残さむ

 「みいくさ」とは聖戦です。あの戦争に反省さえしません。安倍首相も国会で「侵略戦争の定義は定まっていない」と答弁しています。祖父から同じ歴史認識を受け継いでいると感じられます。

 辻井は昨年十一月に亡くなりました。彼が「細く険しい」という平和憲法を守る道に、私たちは立ちます。



中日新聞社説2014年1月4日
福島への想い新たに 年のはじめに考える

【社説】
2014年1月4日

 時間を押し戻そうとするかのような北風が、年の瀬を駆け抜けました。三度目の年頭。もう一度、心に深く刻まなければなりません。福島を忘れない。

 オランダの首都アムステルダムの街を歩くと、三つ並んだ十字の印を至る所で見かけます。

 赤い地の真ん中に、黒っぽい横線が一本、その上に白い十字が横に三つ並ぶのは市の旗です。

 そして、二頭のライオンに挟まれて、十字が縦に三つ並ぶのが市の紋章です。

 十文字が意味するもの

 三つの十字の意味はと言えば、その昔、街を襲った三つの災い、洪水、火災、感染症を表しているそうです。

 起こりうる災いの怖さを子々孫々まで語り継ぎ、常に備えを怠ることがないように、あえて十字を掲げています。

 江戸時代からオランダに多くを学び、近代化の礎にしたこの国も、災厄を歴史に刻む方法までは、教わらなかったと言うのだろうか。首都東京の中心が、忘却の波に沈み始めているようです。

 福島の事故現場は収束に向かうどころか、混迷を深めています。

 爆発を免れた4号機では、傷ついていない核燃料の取り出し作業が始まりました。

 しかし、1~3号機から溶け出した燃料は所在さえつかめません。原子炉格納容器の外に溶け落ちた恐れもある。無事故でも一基百年といわれる廃炉、解体への道は、緒に就いたとも言い難い。

 汚染水は年末年始もお構いなしに流れ出ています。

 熟練の作業員は、被ばく線量が限度に達して次々に現場を離れ、作業の質は低下する。

 自治体に丸投げされた、有事の際の避難計画作りは一向に進みません。計画はできたとしても、目に見えない放射線からどこへ逃げれば安心なのか。

 使用済み核燃料の捨て場所は、どこにも見つからないでしょう。リサイクルの計画も夢物語の域を出ていません。

 十字、いやバツ印をいくつ付ければいいのでしょうか。

 これだけ多くの災いの種を抱えているにもかかわらず、政府は前政権の「二〇三〇年代原発ゼロ」から一転、原発を「重要なベース電源」と位置付けました。

 ベース電源とは、二十四時間、しかも安価に稼働させられる電源です。震災前は、原発と揚水発電以外の一般水力。そして石炭火力がそうでした。

 原発こそ不安定では

 電力需要時に足りない分を補うのが、ピーク電源と呼ばれるLNGや石油火力です。

 原発は、出力調整が極めて難しく、一度運転を始めたら、二十四時間最大出力で、突っ走るしかありません。

 今、国内に五十基ある全ての原発が、再び停止しています。

 天候に左右されやすく、出力が不安定な風力や太陽光には、ベース電源の重責を担えないといわれています。

 だとすれば、無限大の安全管理が必要な、扱いにくい原発こそ、最も不安定な電源なのだと考えなければなりません。

 原発を動かさないと、LNGや石油火力の燃料費がかさみ、電力会社は年間三兆六千億円の負担増、百万キロワット級の原発一基を稼働させれば、温暖化の原因になる二酸化炭素(CO2)を、一年で0・5%減らせるとされています。

 原発は、本当に割安なのか。

 政府によれば、福島の賠償と除染、さらに廃炉や汚染水対策に、少なく見積もって約二十兆円の費用がかかります。

 東電の負担なら電気料金への転嫁、国が持つなら税金です。結局つけは国民に回ります。どれだけお金を使っても、福島の人たちの暮らしや風景は、もう元へは戻せません。

 現在十六基の原発が、原子力規制委員会に再稼働の申請を出しています。政権は今年を、再稼働の年にしたいのでしょう。

 原発は金のかかる危険なものだということに、国民の多くはもう気づいているはずです。

 温暖化対策ならば、再生エネルギーの普及の方が王道です。私たちは“太陽と風の年”をめざしましょう。

 フクシマを心の地図に

 ドイツでは、再生可能エネルギーへの転換が着々と進んでいます。総電力の約二割を賄い、温室効果ガスを一九九〇年比で二割以上減らしています。

 市民自ら電力会社を設立し、再生可能エネルギーでつくった電力だけを地域へ供給するという、エネルギー自治も進んでいます。

 なぜでしょう。

 スリーマイルとチェルノブイリとフクシマを、心の地図にしっかりと、刻みつけているからです。



中日新聞社説2014年1月3日
希望学がひらく未来 年のはじめに考える

【社説】
2014年1月3日

 暮らし向きへの不安が募り、人びとから「希望」の文字が薄らいでいるようです。どこをみても格差の影。どうすれば自分の住む地域に光が当たるのか。

 窓の外は雪です。教室のホワイトボードを背に、二人の先生が熱心に言葉をかけていました。

 約三週間前の昨年暮れ、福井県鯖江市の市立中学校で「希望学」という講座が開かれました。八十人ほどの生徒は初めのうち、やや戸惑った様子でした。無理もありません。この両先生、実は東京大学の教授なのですから。

 希望学-。聞き慣れない方も多いでしょう。八年前にできたばかりの、ほやほやの学問です。

地域から解きほぐす

 こんなデータがあります。

 ある調査で、日本人の三人に一人が「希望がない」とか「あっても実現しない」とか、あきらめの回答をしているというのです。

 なぜなのか。若者の就労問題などに詳しい玄田有史教授や、中村圭介教授ら東大の社会科学研究所の面々は検討を重ね、こう結論を出したのです。「まず地域をくまなく見てみよう」と。

 閉塞(へいそく)の時代を解きほぐし未来を開く糧は地域にある-という確信から、独自の学問である希望学は始まったといってよいでしょう。

 地域密着の聞き取り調査に重きを置く手法は新聞にも似ているようです。

 福井県の調査に入ったのは二〇〇九年。自然や伝統に恵まれ、平均寿命や教育、貯蓄など各種の全国調査で常に上位に顔を出す“幸福度”の高い県です。

 その福井県も、実は分岐点に立っている。県内十三基の原子力発電所の今後をめぐる県民の選択や対応は、日本の未来を左右するといっても過言ではないでしょう。

 足元でも産業の空洞化や若者の県外流出、単身高齢者世帯の増加など、課題は山積しています。

効率より無駄のよさ

 たとえば希望学の講座が開かれた鯖江市。日本はイタリアなどと並ぶ眼鏡生産大国で、その日本の眼鏡フレームの九割超が鯖江産なのです。しかし、この二十年ほどで眼鏡づくりの事業所や従業員の数、出荷額のいずれもが三割から四割も減った。中国の台頭がすごい勢いだった。気づいたら鯖江の業界が縮こまっていました。

 三年前の一一年五月。地域活性化策として民間が試みた「さばえギネス」は、県内外の学生や鯖江の眼鏡業界、市民ら多くの人びとを巻き込みました。

 不要になった眼鏡をつなげ、ギネス記録に挑戦しようとしたのです。国内外から二万二千個を超える眼鏡が寄せられ、ドイツの世界記録(千七百六十メートル)を抜く二千十一メートルを達成し、堂々とギネスに認定されました。

 仕掛け人は、眼鏡業界とは無縁の竹部美樹さん(35)です。いったんは東京のIT企業に就職し、再び戻ったUターン組です。離れてみて、若いころは嫌だった故郷のよさと“危機”に、あらためて気づいた。

 地域おこしの活動として「地域活性化プランコンテスト」という企画を続けています。県外の学生を鯖江に招き、外の目から斬新で実現可能な案を出してもらい、地元の学生らにも必ず加わってもらう。生まれた案の一つが「めがねギネス」だったのです。

 外からの客観的な指摘が「変えよう」という刺激や想像力になって伝わり、地元の眼鏡業界の、中でも若手をもり立てたのはむろんです。

 日本人が持つ希望の多くは、仕事に関することというデータは、ずっと変わりません。希望が失われる主因が経済問題にあるのは明らかです。

 希望学では「希望は、個人の内面以上に、個人を取り巻く社会に左右される」と指摘しています。

 経済の効率性ばかりが優先される現代日本のありようを考えたとき、よい意味での無駄や回り道のよさをあらためて見直してもよいのではないでしょうか。

 教室の講座に戻りましょう。

 「希望学として最初に調査したのは岩手県釜石市だったんだ」

 玄田教授が話しました。「釜石は日本の製鉄発祥の地として大いに栄えた街だけど、度重なる津波や製鉄縮小の荒波とか苦難や試練を経験し続けた街なんです」と。

挫折や困難の経験が

 けれど、そこで大切な発見があったと言います。「釜石の元気のために」と、高齢社会向けの製品開発など新産業が芽吹いている。「挫折や困難の経験から希望の物語は生まれる」という事実です。

 鯖江の眼鏡業界も、縮んでも衰退はしていないといいます。

 過疎の問題一つとっても考え方次第です。不要な木材や耕作放棄地など各地の農山村の資源は“宝の山”として生かす方法もある。困難から目を背けず、立ち向かおうではありませんか。

1月2日は休刊日です。

1月1日以前は、
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【ときどきのメッセージ】
国民を指差して、「こんなヤツに負けられるか」と絶叫
クリックで原寸大
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そもそも国民に主権があることがおかしい。全文はこちら クリックで原寸大
nisidaShoji_ss.jpg


 安倍さんが最も欲しがっているモノは「国家緊急権」。
その欲しくて堪らなかったモノがもう手に届くところまで来ています。
それを手に入れるには、自民党の憲法草案を通すほかないわけですが、
手段を選ばず、あらゆることを仕掛けて来ることが想定されます。
その国家緊急権は、第九章 緊急事態にやろうと思えば「何でもできる」を織り込んでいます。 --> こちら

つぎの動画ですが、安倍さんのこれまでの言動がヒトラーのそれと見事に符合していることを描いています。
ということだと、これから何が起きるかも想像がつくというものです。
クリック ↓ でYoutubeを開く
hodoStation160318_ss.jpg


 大新聞・テレビが批判をやめた、戦前と同じ。
安倍首相「安保法制は中国が相手、必ずやる!」と戦争を想定--> こちら
たかが個人的な野望なのに、実現するためにはどんなに反対されようが構わず進め、そして国民を戦争へ引き摺り込む・・
 断じて許しません。
戦争法案施行に合わせて日中緊張が仕掛けられ着々と前準備が整えられる。戦争させられるのも時間の問題である。
「ふたたび戦争の歴史になる・・」と2007年安倍一次政権から繰り返し警告してきた。
2005年に決定されたシナリオがいよいよ最終章を迎える、まさに危機的状況となってきた。
殆どの国民が知らないでいるシナリオが、しかも着々と積み上げられてきていることに気付き、そして大声上げて阻止しないと取り返しのつかないことになる。
阿鼻叫喚となる前に・・・

というのは、
アーミテージ・レポート第3弾アーミテージレポート(ブログ) のシナリオ通りに進んでいることでわかるように、アメリカ戦争屋勢力が、ニッポンの外務省と安倍政権(強力な軍事力を持つことで有利になれるという妄想・野望)を利用できるところまで最大限利用しようとしているからだ。
自分から決して先には手をださず、
ニッポンを使って事を起こそうとしている連中の 謀略 はいまだ消えていない。執念深くしかも確実に実行しようとしている。
どんなに時間がかかろうが、システマチックに動いてやり遂げる連中を甘くみたら後悔することになる。
アメリカが仕掛けてきたこれまでの謀略・戦争の数々が教えてくれている。

ふたたび戦争の歴史になる・・
クリックで原寸大
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自由党(国民の生活が第一)

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Appendix

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「お気に入りの音楽」 もくじ

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※※ 納得ゆく演奏を取り上げています。高音質なスピーカーや抜けのいい開放型ヘッドフォンでどうぞ ※※

【愛聴盤】ショパン ノックターン 江崎昌子エザキマサコ
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録音は最悪で申し訳ありませんが・・・
ショパン ノクターン第20番 嬰ハ短調 「遺作」~ギオルギ・ラッザビゼ
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ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61 ~クライディ・サハチ
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アルネセン マニフィカト ~Arnesen MAGNIFICAT
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チャイコフスキー第6番"悲愴"チョン・ミョンフン
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マリ・サミュエルセン ヴィバルディ四季~夏
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八神純子 DAWN
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ブラームス交響曲第一番 スタニスラフ・フランクフルト放送交響楽団
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ベートーヴェン「月光」ネルソン・フレイレ
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ポールポッツ Paul Potts・La Prima Volta
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ユジャ・ワン グルック・メロディー(ズガンバーティ編)
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ミルシア La Vergine degli Angeli
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ミルシアMirusia ソルヴェイグの歌
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Ave Maria ミルシアMirusia
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ラブ・シュープリーム - 八神純子
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ミルシアMirusia ショパン別れの曲
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スーザン・エレンズ Don't Cry For Me Argentina
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本家HP

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「約束」 ~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯

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